理想気体の状態方程式

真空工学
Hannes Grobe, CC BY 3.0 , via Wikimedia Commons

理想気体の状態方程式についてまとめました。

理想気体

以下の仮定を満たし理想気体の状態方程式に従う気体のことを指します。

  • 分子自身の体積を無視
  • 分子間力を無視(弾性衝突のみ)

一方、現実の気体は実在気体と呼ばれ、これらの仮定を満たしませんが、高温・低圧ほど理想気体に近い振る舞いとなります。真空工学における真空の定義は「通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態」(JIS Z 8126-1 真空技術- 用語- 第1 部:一般用語、ISO3529-1 Vacuum technology-Vocabulary-Part 1: General terms)のことですので、多くの計算や理論で理想気体として取り扱うのが一般的です。

理想気体の状態方程式

実験的に発見された3つの気体の法則、ボイルの法則 \(V \propto 1/p\)、シャルルの法則 \(V \propto T\)、アボガドロの法則 \(V \propto \nu\) を統合して得られました。

\[pV=\nu RT \tag{1} \]

ここで、\(R\) はモル気体定数で、

\[R=  8.3144626181532 \;{\rm J / (K \cdot mol)} \tag{2} \]

高校の物理や化学で習うのはこの形だっとと思います。
一方、気体分子運動論からは以下のように求められます。

\[pV=NkT \tag{3} \]

ここで、\(N\) は気体分子の数です。\(k\) はボルツマン定数で、

\[k=  1.380649 \times 10^{-23}\;{\rm J / K} \tag{4} \]

式 (1)、式 (2) より、

\[k=\frac{R}{N/\nu}=\frac{R}{N_A} \tag{5} \]

ここで、\(N_A\) はアボガドロ定数で、

\[N_A=  6.02214076 \times 10^{23}\;{\rm 1/mol} \tag{6} \]

つまり、ボルツマン定数 \(k\) は気体分子1個あたりの気体定数を意味します。
ところで、式 (3) は気体分子の数密度 \(n=N/V\) を用いると以下のように表せます。

\[p=nkT \tag{7} \]

理想気体の状態方程式はいくつか異なる形式で表現されますが、最もシンプルな式 (7) さえ覚えておけば他の形式も導出できます。

\[p=nm\frac{k}{m}T=\frac{Nm}{V}\frac{kN_A}{mN_A}T=\frac{w}{V}\frac{R}{M}T=\rho\frac{R}{M}T=\frac{\nu RT}{V} \tag{8} \]

ここで、\(m\) は気体分子1個の質量、\(M\) は分子量、\(w\) は全気体分子の質量、\(\rho\) は密度で、結局式 (1) も導出することができます。

Caesar’s Last Breath

これは気体分子の拡散や確率の概念を説明する古典的な例として有名なようです。昔勉強した気体分子運動論の教科書にも載っていました。
人間が一呼吸で吐き出す約 400 cc の空気中には約 1022 個の分子が含まれています。一方、地球の大気(総質量およそ 5.2 × 1018 kg)には約 1044 個の分子が含まれています。つまり、一分子と一呼吸の関係と、一呼吸と地球の大気全体との関係は同じになります。ジュリアス・シーザーの最後の一息が大気中に完全に拡散されているとすると、私たち一人ひとりが一呼吸ごとにその分子を 1 つ吸い込む可能性がある、ということになります。人間の肺に約 2000 cc の空気が入っているとすると、私たち一人ひとりの肺にはジュリアス・シーザーの最後の息からの分子が約 5 つ含まれている可能性があります。

理想気体の状態方程式のオンライン計算サイト

以下のサイトを見つけました。圧力 p、体積 V、 物質量 n、 温度 T の任意の 3 つの数値を入力すると残りの 1つを計算してくれます。

参考

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